NPOや地域活動への市民参加は、地域社会の活性化と社会課題解決において重要な役割を果たすものの、多くの人々がこれらの活動に参加していない現状がある。内閣府の調査によると、2018年の一年間にボランティア活動に参加しなかった人は83%に上り3、この数字は2015年の82.6%とほぼ変わらない水準で推移している。鳥取市の地域活動参加調査においても、参加を妨げる要因として「仕事が忙しくて参加する時間がない」が28.5%と最も高い割合を示している1。このような状況は、個人的要因から組織的要因、社会構造的要因まで複合的な原因によって生じており、これらの要因を体系的に理解することが、地域活動への参加促進策を検討する上で重要である。
地域活動への参加を阻害する最も大きな要因は時間的制約である。鳥取市の調査では「仕事が忙しくて参加する時間がない」が28.5%を占め、全国調査においても「参加する時間がない」が51.4%で最上位となっている13。この傾向は特に男性において顕著であり、男性の32.9%が仕事の忙しさを理由に挙げている一方、女性では25.4%にとどまっている1。年齢別に見ると、50代では45.1%と最も高い割合を示しており、働き盛りの世代における時間的制約の深刻さが浮き彫りになっている。
現代の労働環境において、長時間労働や業務の複雑化が進む中で、平日の夜間や週末の時間を地域活動に充てることが困難になっている現状がある。特に管理職や専門職に従事する人々にとって、責任の重い業務を抱える中で、地域活動への参加は優先順位が低くなりがちである。また、通勤時間の長さや残業の頻度も、参加可能な時間を制限する重要な要素となっている。
女性においては「家事・育児・介護などで時間がない」という理由が男性の2.7%に対して9.6%と高い割合を示している1。これは、依然として家庭における責任の多くが女性に集中している社会構造を反映している。特に子育て世代や介護を担う世代では、地域活動への参加よりも家族の世話が優先されることが多い。育児期間中は子どもの世話に追われ、高齢者の介護を担う世代では介護サービスの利用時間外にも継続的なケアが必要となることが、地域活動参加の障壁となっている。
鳥取市の調査では「人間関係がわずらわしい」が15.8%と二番目に高い割合を示している1。この要因は、地域活動における人間関係の複雑さや、既存の参加者との関係構築への不安を反映している。特に新規参加者にとって、既に形成されたグループに入ることへの心理的ハードルは高く、排他的な雰囲気を感じることで参加を躊躇する場合が多い。また、地域活動では多様な年齢層や職業背景を持つ人々が集まるため、価値観の違いや意見の対立が生じる可能性があり、そうした対人関係のストレスを避けたいという心理が働いている。
さらに、地域活動では継続的な参加が期待されることが多く、一度参加すると断りにくい雰囲気や責任を押し付けられる懸念も、参加への躊躇につながっている。特に日本の社会文化において、集団の和を重視し、一度関わると深くコミットメントを求められる傾向があることが、気軽な参加を妨げる要因となっている。
「自分が参加するメリットや必然性を感じない」という理由が6.9%の人々によって挙げられており1、特に10代では15.8%と高い割合を示している。これは、地域活動の目的や成果が明確に伝わっていないことや、個人にとっての具体的な利益や成長機会が見えにくいことを示している。若い世代ほど、参加することで得られる学びやスキル、将来のキャリアへの影響などを重視する傾向があり、これらが明確でない活動には参加しにくいと感じている。
また、地域課題に対する当事者意識の希薄さも、参加の必然性を感じない要因として考えられる。都市化や核家族化の進展により、地域とのつながりが希薄になっている現代において、地域の問題を自分事として捉える機会が減少している。そのため、地域活動への参加が自分の生活にどのような影響をもたらすのかが理解されにくい状況がある。
「身近にどんな活動があるのか情報がない」という理由が2.3%の人々によって挙げられており1、全国調査では「ボランティアに関する十分な情報がない」が参加しない理由の二位となっている3。この情報不足は、地域活動やNPOの広報力不足と、情報を求める市民との間の情報格差を示している。多くの地域活動団体は限られた予算と人員で運営されているため、効果的な広報活動を行うことが困難な状況にある。